なにわのみや発見マップ

大化の改新の舞台ともなった都の跡地であり、大阪城を目前にした難波宮跡公園内にある『なノにわ』のある周辺は、
現在も文化、食、芸術を日本や世界へ発信する作家や職人、芸術家が集まる街でもあります。
この地域を拠点に活躍する素晴らしい「街の人」の話から、難波宮周辺の魅力を再発見してください。
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「生地」という
もの作りを通して
全国各地の農家や
生産者の伝え手に

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maemuki suit!

オーナー小西 宏和さん

紳士服業界の名門、大阪「オカモト・デザインシステム」で紳士服の基礎を学び、大手アパレルや百貨店で実践を積んだのちに独立。2007年に自身のブランド「maemuki suit!」を立ち上げる。これまでにないタオル生地によるシャツ作りを皮切りに、近年は「肌に良く、環境にも良い、安心安全なモノづくり」を掲げて日用品の製作にも取り組む。
  • Photo : わたなべよしこ
  • Text : 村田 恵里佳
  • Edit : 長瀬 緑
「美味しいおくるみ」はオーガニックコットンを使用した三層のガーゼ生地。山形のニンジン、愛媛のブルーベリー、愛知のイチゴなど、無農薬栽培された作物をアップサイクルし、自然の色素で染め上げる。
とある工場との出合いから
サステナブルなモノづくりへ

屋号にはスーツとあり、紳士服業界出身という小西さんのキャリアを知れば[maemuki suit!]はテーラーと思われるかもしれません。けれど実際に手掛けるのは、洋服にとどまらず、子ども用のおくるみやスタイ、日用品のタオルまで。特筆すべきは、どれも今治製のタオル生地やガーゼ生地で作られていることです。
「きっかけは、母の故郷でもある愛媛県の今治タオル工場の方との出会いでした。その工場は、(タオルの原料となる)コットンを育てる農家さんが安全に仕事できることが大切と思い、減農薬コットンを使っておられて。手摘みのコットンを選んで。その方が綿花のポテンシャルや気持ちも生かすことができるから、と。そこまでこだわってモノづくりをされている姿勢に感銘を受けました」。
時は2010年のこと。今や市民権を得たSDGsが普及する遥か前のことですから、発想そのものが先駆的。刺激を受けた小西さんは「タオル生地で服を作れないか?」と考え、オックスフォードクロスをイメージしたオリジナルの“シャツ用タオル生地”の試作を開始します。そうして5年という歳月を経て、見事に製品化したというからあっぱれ! マイウェイなもの作りに拍車がかかります。

「タオルメーカーさんもよく付き合ってくれて、ありがたいです」と、信頼を寄せる今治の工場と作り上げたオリジナルは、洋服用のタオル生地や一重ガーゼ生地など。
フードリユースにより生まれた
「美味しい」名作が続々と

アパレルの視点から生地作りを続けてきた小西さんですが、転機が訪れたのは2016年。お子さんを授かったことで、おくるみを作ろうと思い立ちます。原料はこれまでの減農薬コットンから、農薬や化学肥料を使わず栽培されたオーガニックコットンへ転換。また「オーガニックの糸を使うのに、一般的なタオル染料を使うのはもったいない」と、染料も再考。やがて植物から色素を抽出して染める、ボタニカルダイと呼ばれる手法に辿り着きます。極め付けは、色素を抽出する植物さえもオーガニックに徹底! なんともストイックである反面、みんなをワクワクさせる発想力こそが小西さんの持ち味。植物は植物でも、日本各地の敬愛する農家から野菜や果物を調達して染料を作ることにしたのです。
「たとえば北海道の農楽蔵というワイナリーから頂くシャルドネの搾りかすだったり、山形の月山という豪雪地帯にあるtaro農場で摘果された雪下にんじんだったり。基本的に出荷できないものや捨てるものを農家さんから買わせていただいて、染色メーカーさんへ託します」。
そうして誕生したのが「美味しいおくるみ」。子どもの肌に触れても安心で、環境にも良い。
「ある農家さんがおっしゃるんです。農作業していると、自分の“命が喜ぶ”って。すべての命にとって喜ばしいことをすると、それらの命が自分を応援してくれるものだって。僕も目指す方向は一緒の感覚なんです。子どもたちには気持ちのいい環境を残してあげたい。だからこそ、できるだけ持続可能なもの作りをしたいと思っています」。

店頭ではオリジナル生地の販売も。ストライプやカラーや生成りのタオル生地などは、洋服やホーム用品にされる人も多いそう。
懐深いこの街だからこそ
自然体で伝え届けられる大切なこと

生地や服を作る一方で、近年は祖父の畑を引き継ぎ、大豆の栽培もおこなっている小西さん。毎月のように愛媛へ通い、オーガニックの大豆を栽培しています。アパレルと農業は隔たりがあるようですが、小西さんのモノづくりを知れば、それらが根っこで繋がっていることは瞭然。食に興味を持ち始めると、食材と真摯に向き合う料理人との出会いが全国各地で生まれ、さらに農家など生産者と出会う機会も増えた。「maemuki suit!」のモノづくりに関わるそうした生産者や敬愛する料理人を、「大阪の方にも知っていただく機会になれば」と、最近ではゲストを招いたフードイベントも開催しています。
「いろんな地域の食材をいただきながら、自分たちの体を作る食べ物が、どこで、だれによって、どんな風に作られたか?を考えるきっかけを作りたいと思ったんです。食を通して、自分たちの健康や環境、トレーサビリティ、サステナビリティなどをゲストから学ぶ場にしたい」。
2025年1月には2年連続で熊本[ワイン食堂トキワ]、同年3月には宮城の[クッキーガール]と迎えるゲストはさまざまですが、会場は決まってお向かいの[箱屋常吉]。ご近所コラボはそれにとどまらず、徒歩5分圏内にある[らくだ坂納豆工房]とも。自家栽培の青大豆とおなじ畑で自生する稲藁を託し、オリジナルの「maemuki 納豆」を作ってもらっているというから、なんとも愉快。難波宮に程近いここ谷町は、商売人同士の交流がおのずと生まれるおおらかな地域。老舗も新店も分け隔てなく、共感すれば協力し合う。そんな懐深い街だからこそ、小西さんのまっすぐな試みは今後も店舗の枠を超え、広く発信され続けるはずです。

なにわのみやと私

難波宮は幼稚園の近くだったこともあり、小さい頃からなじみのある場所だったという小西さん。
ピクニック、凧揚げ、それに宴会。
遊び方は無限大の、最高の空き地。

「僕にとって難波宮は、最高の空き地です。店だけでなく住まいも近所なので、遠出するにはちょっとしんどいなぁという休日は、家族でお弁当を持ってピクニックに行ったり、正月は子どもたちと決まって凧揚げに行ったり。これだけ都会の中心にあって、電線のない場所ってなかなかない。また、近くにスタジオを持つフィットネストレーナーの友人がいて、天気のいい日は難波宮でシートを広げてストレッチしたのも気持ち良かった。まぁ、その後は宴会になりがちなんですけど(笑)。いつか実現したいのは、難波宮で摘み採った野草で草木染めをするワークショップ。難波宮まで歩いて約10分。ちょっと公園行こうぜ!という感じで、身近にある植物に触れて、採集して、自分で染めてみる。そんな難波宮ツアーをやってみたいと思っています」。

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